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THE青ジャージいちばんきれいなものをタダで見せて下さいおよそ200g架空の冒険者オモチャはちらかっている/オグラオグラBOX3枚組

表ジャケット裏ジャケット
UKP RR-6017


架空の冒険者/800ランプ(99年)
    CD
  1. 架空の冒険者
  2. 夢みる夢子
  3. 空が落ちて来る
  4. 陽気なプリン
  5. 30代の挫折
  6. 夢の観覧車
  7. ジェルソミーナ
  8. 君にハンバーグ
1,2,4,6,7,8 : 作詞・曲/オグラ 編曲/800ランプ
3 : 作詞・曲/友部正人 編曲/800ランプ
5 : 作詞・曲/オグラ 編曲/800ランプ&菅原文

オグラ:Vocal/A.Guitar/Kazoo/Tambourine/Chorus
向井啓輔:E.Guitar/Chorus
原めぐみ:Keyboard
川島 晃:Bass
中安哲朗:Drums/Chorus
参加ミュージシャン
菅原 文:Oboe(1,4,5)




800ランプ3rdにしてラストアルバム。帯のコピーはこうだ。

10代、なりゆきという地図が宝の山に見えた
20代、圧倒的な感動を探知するでたらめな磁石を信じた
30代、駆け抜けてきたのに、僕は無傷だ!

ジャケットがオグラのアップなのにまず驚くが、アルバム自体も、どことなく、バンドというより「オグラのアルバム」になっているように思う。私が購入した時は、すでに、活動休止を知った後だったんだけど、「終わり」をイメージする曲ばかり。友部のカバーも、バンド活動の始めが青ジャージとするなら、推薦文を掲載した青ジャージからカバーで締めた800ランプの最後というこじつけもできないじゃない。何より、「30代の挫折」なんていう、私にも直撃するようなタイトル曲まで収録されている。最後のアルバムのラストの曲が、日常のささやかなではかない幸せ感を噛み締める曲なのが、また、涙を誘う。


1. 架空の冒険者
自分らしくいようだなんて そんなのじゃもうダメだ
きみの話は形容詞でぶくぶくじゃないか
ありのままでいいんだなんて そんなのじゃもうダメだ
ぼくらの理想は口実でベトベトじゃないか
もしも翼があったとしても きっと飛ばないだろう
この空は単に広いだけでおもしろそうじゃないんだ


「行くとこがどこにもないんだ」。いきなりこんな曲から始まっちゃう。 「死にたくなるような歌うたって 生きていこうぜ」といわれても、困っちゃうのだ。でも、これが現実である。

たとえばキバがあったとしても きっと噛みつかないだろう
敵がばくぜんとしすぎててやる気がでないんだ
もしも神様がいたとしても きっと祈らないだろう
実用的な夢かかげて バカみたいに立ってる
広告だらけのこの町を歩いて行かなくっちゃ
本当はだれも楽しんじゃいない この便利な荒野を

架空の冒険者たちよ 架空の冒険者たちよ
ぼくらを救ってくれよ
行くとこがどこにもないんだ

ぼくらが行こうとしないから 道はいつまでもダラダラ長い
死にたくなるような歌でも 口ずさもうぜ



2. 夢みる夢子
町中の花をかっぱらってぜんぶココロに突き刺して
にぎやかな町をちょんぎって歩け
人様に自慢できるものなんかなんにもないのだ
夜風にからまる欠陥商品

楽しもうとした時点で楽しみは色あせてしまう
何度でもリセットがきく便利でありがたい世界


最初は、一般的な女の子を歌ってるのかと思っていた。少女漫画の主人公みたいに 生きていければ楽しいもんなぁ、なんて。でも、よくよく考えて、「架空の冒険者」からの繋がりを思うと、「裸の王様」は、「夢みる夢子」ちゃんになっちゃった、ということかもしれない。 なもんで、私も夢子ちゃんでいることにした。

I am 夢みる夢子ちゃん
目玉に星をバラまいて
たったひとりのパレードだ
行く所なんか別にないけどさ
行く所なんか別にないけどさ



3. 空が落ちて来る
友部正人のカバー曲(有名な名曲らしい)。いきなり、ムチャクチャ重い。 これまでは、飲んで酔っぱらっても、どこかのんびりとした雰囲気だったのに、 「さすらいの高円寺」にあったファンタジーもなく、現実的な酔っ払いの 夢想である。


4. 陽気なプリン
陽気なプリンの上でぼくらは跳ねていた
陽気なプリンの上でぼくらはなまけてた
陽気なプリンの上で世界は成立していた
陽気なプリンの上でぼくらはとり残されてた


プリンの上の幸せ感。甘く柔らかい乳白色とカラメルの上。 そんな幸せな空間もいつかは無くなってしまう。そして無くなってしまった。

陽気なプリンの上にある日スプーンがやってきて
“ここは明日とりこわされるよ”と言った
陽気なプリンの上でぼくらは泣きじゃくり
陽気なプリンの上でぼくは君を抱き締めた・・・・

削られてゆくプリンをぼくたちはながめていた
あの奇跡はもう二度と 二度と起こらないだろう

パッテンよろよろ
パッテンよろよろ
パッテンよろよろ
あの のろまな いとなみを返して!



5. 30代の挫折
レイモンド 僕はまちがってた
レイモンド 僕はせまかった
レイモンド 僕はバカにしてた
レイモンド 僕はまみれなかった
レイモンド 賭けぬけてきたのに
レイモンド 僕は無傷だ

世間話も本当は ちょっとぐらいはできたんだ
最近はシイタケも 食えるようになったけど


具体的な単語が並ぶけど、どうにも抽象的な内容だ。レイモンドとは誰なんだろう?ハードボイルド小説の あのレイモンド・チャンドラーだろうか?「10万円の笑顔」なんてのは、青ジャージの「10円」をつい連想してしまう。 「10円やるから愛してよ」といってたのが、10万円の笑顔で微笑む君というのは、 随分と現実的なお値段だ。これが30代の挫折と現実なのだろうか。

10万円の笑顔で 君は微笑んでる
10万円の笑顔で 君は微笑んでいる
10万円の笑顔で
10万円の笑顔で
たった10万円の笑顔で
お前は微笑んでる

レイモンド 長い長い魔法がとけて
僕は今 からっぽになった
レイモンド 白状するよ僕は
弱くても美しいものが好きだ



6. 夢の観覧車
もはや この地上にはなにもない
あるように見えるのは過去ばかり
まえにあったものだけが着せ替えられて
まるで新品のようにバラまかれる

キーボードの音色が特徴的だろうか。全体的にはピアノだが、部分的にドアーズのオルガンをイメージさせる音色もある。

ぼくらはいつも言いそびれてる
言いそびれながら回りつづける

観覧車にのっかって
観覧車にのっかって
観覧車にのっかって
観覧車にのっかって
観覧車にのっかって
観覧車にのっかって
観覧車にのっかって
観覧車にのっかって
楽観者でありつづける



7. ジェルソミーナ
彼女はきれいな場所に立っていた
長い髪を天空に流していた
この世の中と彼女との間には
あまりに目立たないすきまがある


ジェルソミーナ?フェリーニの映画「道」に出て来るジェルソミーナ? 無知を晒すのもあれなので置いておこう。これも、 オグラ自身と800ランプの姿をつい想像してしまう。「やりなおしのきく時代の中で  とり返しのつかない価値観を持ってた」とは、夢見がちな夢子ちゃんには辛い言葉だ。

やりなおしのきく時代の中で
とり返しのつかない価値観を持ってた
そのままの姿で成長して行け
もうめざさないで

彼女はきれいな場所に立っていた
自分の内部をじっと見つづけた



8. 君にハンバーグ
ハンバーグステーキが突然食べたくなって
ぼくらはめずらしくレストラントへ出かけた
酒場以外では落ちつかないぼくだけど
そのよるはなぜだか行ってみたいと思った


なぜだか、「君もケチャップみたいに笑っている」という部分を聞くと、 無性に涙ぐんでしまう。よりによってケチャップみたいな笑顔だけど、 ケチャップみたいな笑顔こそ幸せをもたらしてくれるもんだ。 800ランプも私にはそんな笑顔のような存在だったかもしれない。

あっとゆーまに店を出て“少し歩こうよ”と君
人気のない道を バス停二つ歩いた
ぼくはせーせーして 急にふざけたくなった
君もケチャップみたいに笑っている

理解されたいと 思い始めてからのぼくは
君が言うように つまらなくなっちゃったのかな

歩いて行こう このままもう少し 見上げる空に 月は上弦
子供みたいにふざけながら歩こう たった二人のささやかなパーティー