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THE青ジャージいちばんきれいなものをタダで見せて下さいおよそ200g架空の冒険者オモチャはちらかっている/オグラオグラBOX3枚組

表ジャケ裏ジャケ
MODI Creative Co,Ltd. CXCA-1129


オモチャはちらかっている/オグラ(03年)
    CD
  1. 区民プール
  2. かしこい流星
  3. パッソルと向日葵
  4. あのころ
  5. 犬と私
  6. チョコレートウーマン
  7. Mr.オルガによる宣伝
  8. 酔うべき自分のない者へ
  9. 詩人誕生
  10. だまり込んだ千億
All Songs by OGURA

Arranged by OGURA & MEGUMI HARA
+ 青ジャージ(5.7)
+ 800ランプ(1.2.3.4.8.9.10)






オグラのソロ1st。アレンジの記述を見ると、過去の曲がほとんどなのだろうか? 当然ながら、 バンド構成の音作りとは明らかに違うので、毎度のごとくとまどっているが、 だんだん心地良くなってきている。やっぱり、CDの帯に書かれているオグラ自身の言葉が、 このアルバムへの想いが一番わかりやすいだろう。

19歳の頃、新宿高層ビルで
見かけた巨大な手廻しオルガン。

ワルツが回転し始める。
太いベース音が地面を揺する。
人形が太鼓とシンバルを
いっせいに叩き鳴らす。

あの強烈な光景が突然、僕の中に
よみがえって来た。
青ジャージ、800ランプの原点は
あそこだったのかもしれないな。
あれを廻しながら歌えたら・・・

しかし現実は無情であった。
高価な上、小型のものでは
ベース音が足りない。
さあ、どーする?えーい、めんどくせえ
自分で作っちゃえ、って出来たのが
「手づくりデジタル手廻しオルガン」

このチンケな箱から出てくる音楽が
あの娘の町にも届けばいいな。
ずいぶん長いことかかっちゃったけど
やっと出来たよ。    −オグラ−


オグラの近況はこちら、「オグラのヒミツ」。リリー・フランキーのサイト内で、オグラ自身によるエッセイが連載されている。


1. 区民プール
ヒョロヒョロと始まるこの音が手回しオルガンなんだろうか。

空に走る電線 雲のオタマジャクシ
すべてが全音符 やがて溶けちゃう音楽
今年もまた夏が ムクムクわいてきた
ゴチャゴチャ考えて区民プールへ行く

夏の暑さで区民プールへ。水の中に浸かって静かな世界の住人になってみると羊水の中にいたりした自分を思い出す。 夏の一日の雰囲気が良く伝わる。

2. かしこい流星
流星が流れて行く みずからを輝かせ
かしこい貴女の舞えだけで 僕は自分でいられた

大太鼓っぽい音とオルガンの音がとても心地良い。状況は、青ジャージの「幻覚の中で」と同じなんだろうか。 寂しさに打ちひしがれてるのに、去っていった者への視線は優しい。

3. パッソルと向日葵
もう、誰も乗る人のない 置き去りにされたパッソル
もう、誰も乗る人のない 置き去りにされたパッソル
もう、誰も乗る人のない 土手に捨てられたパッソル
もう、誰も乗る人のない 夏草の中のパッソル
もう、誰も乗る人のない 不法投棄されたパッソル
もう、誰も乗る人のない なつかしい あのパッソル
そのカゴから 向日葵が伸びていた

夏の日射しの中の緑は、時にドキドキするくらいの生命力を感じさせる。 そんな緑に埋もれる捨てられたパッソルは、人々が見て見ぬフリをする過去が垣間見える。 パッソルだけどさ。

4. あのころ
夫婦が茶ダンスを揺すって 子供を作り出すように
仔猫は売りものではなく 拾うものだったあのころ

風が柳を揺すって 恐怖を作り出すように
迷信は疑うものじゃなく 感じるものだった あのころ


昭和世代のノスタルジーかな。歳をとれば失う物も多いけど、過去を懐かしむのも、それはそれで楽しみの一つかもしれない。 ところで、歌詞にあった「マッカチン」てアメリカザリガニのことだと、最近知った。 山口県では聞かなかっけど、どの辺が「マッカチン」地域なのか、アホバカ分布のように調査してみたい。

5. 犬と私
サクサク 犬が走って来たぞ
背中に死ぬ程 雪つもらせて

こちら、冬の歌。雪が降ってる中を呑気な犬が歩いて来る絵が目に浮かぶ。

あーあ 上機嫌 あーあ なんだか いい気分
おい、犬 もう少し呑もうか?


小脇に抱えたペルシャ猫と飲む酒はブランデーだが、
雪だらけの野良犬と呑む酒には、何が良いのだろう。

6. チョコレートウーマン
二十歳の頃の夢は
駄菓子屋のおばあちゃん
一気に歳をとりたかった
老けてゆくのはイヤだから

ココロやさしい女たち 自立できな男を愛した
ココロやさしい女たち 甘すぎないチョコレート
ココロやさしい女たち 大人ぶったチョコレート


私の悲劇はこんな女の子をみつけられなかったことだろうか。ついつい、甘いだけのチョコレートか、「甘いものは苦手でね」と敬遠してみたり。

ブラジャーの中で 愛がふくらんでる

アキバクンが背負うパンパンに膨らんだ鞄の中には夢が詰まっていると聞いたが、女の子の胸の膨らみは愛が詰まってたのね。

7. Mr. オルガによる宣伝
私は いにしえサーカス一座の
座長をつとめる ORUGAです
私が廻れば この月夜も廻る
瞳を閉じれば この世は消えうせる

いにしえサーカス 団員は
私をふくめて 約一名
秋の夜道を ブラブラ巡業中

手回しオルガンの音色はどことなくサーカスを思い出させるが、そんな、サーカス一座(一人)。 チョコレートにサーカスとなると、どことなく、稲垣足穂の童話みたい。

8. 酔うべき自分のない者へ
自分が何者でもないことは 前からうすうす感じてる
そのくせ何者かになりたくて 同じ所を行ったり来たり

あたふたするならまだいいが 奇妙なテレは抜けきらず
何もしないならまだ潔いが 何にもしないって訳でもなくて

ひゃー、私のことか? ブラブラ自由業な36歳独身(笑)。酔っ払っては、昔の仕事の断片やらこのサイトをしみじみと酒のツマミにしたりね。

ねえ、誰か 傷つけてよ ねえ、誰か 傷つけてよ
最高でもない 最低でもない ちゅうぶらりんなこの僕を


ホント、いっそ、「死ぬ迄ぶって!」て感じ。

9. 詩人誕生
ルールはない 独り言で 成り立つ世界
あたりかまわず 書きまくれ
こいつは愉快だ アハハハハッ


このポジティブさは、「いちばんきれいなものをタダで見せて下さい」の「7月31日」にも通じる。思い付いたことを目についた場所に書くだけで詩人になれるのだ。

10. だまり込んだ千億
にぎやかな 喧騒を ぼんやり ながめ
たおやかに ミステリアスに あなたは 進む
果てしない 果てしない あなたの 闇に
今、ふいと 一匹の 蝶が とまる
千億の 配色を その羽に こぼし


オルゴールのような音色と幻想的な歌詞が耳にとっても心地良い。 個人的には、昔見た白黒映画の中の、どこかの星のお城の描写を思い出す。 タイツ姿の王子と少女が踊ってる、とんでもなく間抜けなんだけどかえって不幸を微塵とも感じさせない世界。 いつの間にか、ファンタジーの世界すら夢が無くなっちゃってる気がする今日この頃。 歌詞からするとあんまり幸せな歌じゃないんだけど、ノスタルジーのツボを刺激されて癒される。